記事クリップ

学力格差の芽、小4から 成績下位層、中3まで停滞の傾向 福岡教育大が3361人調査
(西日本新聞 2018年01月15日)

 小学4年の時に成績がいい子はその後も成績が伸びやすく、下位の子は停滞しやすい-。福岡教育大の川口俊明准教授(教育社会学)の研究チームが、小学4年から中学3年までの学力変化を調査した研究で、こんな結果がまとまった。調査では全体の約3割が中3時点で小4の学力平均を満たしておらず、成績の下位は、経済的に苦しい家庭の子どもが多かった。川口准教授は「データは家庭の経済格差が学力に影響していることを示している」として、学力に差がつく前の段階での支援の必要性を指摘している。

 研究は、西日本地域のある自治体から抽出した中学3年(2016年当時)3361人を対象に実施。小学4年、6年、中学1年、3年時に受けた計4回の算数・数学の学力テストの成績から、学力変化を分析した。家庭の経済状況については、経済的に苦しい家庭に支給される就学援助の受給の有無を調べた。

 川口准教授らは、小学4年のテスト成績の分布を基に、児童を上位から五つのグループに分類。最も成績が良かったグループ(1)(全体の10・7%)の就学援助の受給率が6・6%だったのに対し、最下位のグループ(5)(同8・6%)は49・9%で、成績が下位になるほど就学援助の受給割合が高かった。

 学力では、成績上位のグループほど学年が進むに連れて学力が伸び、下位グループは小4以降も停滞。グループ(4)(同20・0%)とグループ(5)を合わせた28・6%は、中学3年でも小学4年の学力平均レベルに達していなかった。

 これまでの研究では、経済的に豊かな家庭ほど本の読み聞かせや多数の蔵書など学習環境が整っていることが多く、塾にも通いやすいことなどから、進級に従って学力差が開きやすいなどと指摘されている。

 川口准教授は「就学援助の受給率の高いグループは授業についていけないまま、取り残されている現状が明らかになった」と分析。「これらの児童生徒の存在を直視し、教育課程や教育内容自体を見直す必要がある」と話している。